毛細血管スコープ

デジタルマイクロスコープを使った毛細血管の観察方法を紹介します。機材の性能が限られるのでプロ用機器程鮮明ではありませんが、比較的安価に毛細血管の形状を観察することができます。

観察の様子

実際の観察の様子で、爪の付け根の甘皮の更に体に近い部分を拡大しています。LCD画面に映った映像と実物との比率(倍率)は約80倍です。解像度とフレームレートの関係で血液の流れまでは見えませんが、毛細血管の形状は十分に見ることができます。

必要な機材

デジタルマイクロスコープ

私の場合、特に根拠なく、ECサイトで「DM4」という照明(LEDライト)とLCDディスプレィ付きのデジタルマイクロスコープを調達しました。単体で動作するため、PCの接続が不要で、マイクロSDカードをスロットにセットすれば、写真や動画の保存ができるため、毛細血管の観察以外にも便利に使えており、結果として”当たり”でした。

お手元にデジタルマイクロスコープがあれば、まずはそれで試してみるのが良いでしょう。もし新たに購入する場合は、倍率等の表記は統一性が無く(根拠が明示されておらず)当てにならないと思った方が良いでしょう。レビュー等を参考に”はずれ”を引かない様に選定しましょう。

また、他の用途(例えば子供の観察に使える等)も考えながら選定すれば、”はずれ”を引いてもダメージが緩和されるでしょう。その意味でも照明・ディスプレィ付きがお勧めです。

ポリビニルアルコール

ピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが、身近なものとしては、洗濯糊や液体糊の主成分がポリビニルアルコールです。もしも手元に、成分の表記が「ポリビニルアルコール」、「PVA」、「PVAL」となっていて、無色透明に近い物があれば使うことができます。

新たに調達する場合は、洗濯糊の方が粘度が低く、使い易いと思います。洗濯糊、液体糊共に、100円ショップやホームセンターで容易に入手可能です。

クサビ付きDVD

必須ではありませんが、DVDメディアにクサビ状のパッド(スチレンボード、ダンボール等の柔らかすぎない物)を両面テープなどで張り付けたものを作っておくと指の位置合わせ・固定が行い易くなります。

クサビにより、マイクロスコープの光軸に対して毛細血管を直角に補正するとともに、PVA表面で反射が発生した場合に、指を置く位置をずらすことで、反射を回避することができます。

なお、CDはラベル面が被膜で構成されているため、パッドがすぐにはがれてしまい適しません。また、BDは記録面の内周部の出っ張り(リブ)が無いので、DVDに比べ、指の移動のスムーズさの点で劣ります。DVDは記録に使う訳ではないので、使い古しで十分で、傷が盛大に付いていても差し支えありません。

観察の手順

      • 観察する指の爪の付け根の肉が膨らんだ部分にPVAを塗る
      • マイクロスコープで観察する

必要最小限の手順は上の通りで、DVDに手を乗せなくても観察できますが、多少コツが必要なので、DVDの使い方等を含めて説明します。

観察のコツ

まず、マイクロスコープの操作に慣れておく必要があります。観察対象は何でも良いのですが、最初は汚れが付かない物が良いでしょう。おすすめはお札や金券で、観察対象が認識しやすいので、拡大される場所の把握や拡大率と鏡筒の位置関係を把握しておきます。

また、最大倍率を得る方法を見出しておくと観察がスムーズに行えます。(参考までに、DM4で最大倍率を得る方法を最後に記してあります。)

クサビ付きDVDの操作に慣れる

クサビ付きのDVDを観察台の上に置きます。クサビ部分に指の第一関節よりも先の部分が乗る様に指を置きます。指はどの指でも良いのですが、とりあえず、左の薬指で試すのがお勧めです。

指を乗せたら、まず、DVDを下に押し付けず、DVDごと移動させる感触を確認します。次にDVDを下に押し付けると移動が制限される感触をつかんでおきます。

滑り具合の調節に適当なシートを敷くのも良いでしょう。マットタイプのシリコンシート(光沢のあるものはダメ)を敷くと、多少滑りにくいですが、固定がしやすくなります。

指を観察してみます

PVAを塗らずに、できるだけ大きな倍率で爪に焦点を合わせます。次に指の位置をDVDごと奥にずらし、甘皮を観察します。更に指の位置を奥に進めると、肉のある部分となり、皺が見えます。この部分でDVDを下に押し付け、指が動かない様にします。以上の手順を覚えておきます。なお、ここで更に観察すると、皮下に、途切れ途切れではあるものの、毛細血管が見えるかもしれません。

いよいよ毛細血管を観察します

指を一旦外し、上の写真の様に、指にPVAを塗ります。先ほど確認したとおり、甘皮から、肉のある部分にかけて、皺が見えなくなる様にPVAを塗ります。

指の観察手順で覚えておいた手順を繰り返すと、毛細血管が見えるはずです。

PVA表面で反射が発生した場合はクサビと指の位置関係を変えて反射を回避します。位置をずらしても反射が回避できない場合は、指に塗ったPVAに息を吹きかけて変形させるか、PVAを一旦ふき取り、塗りなおします。

観察が終わったら、PVAはティッシュ等で拭き取って下さい。なお、観察に時間をかけていると、PVAが乾いてしまいます。その時は、一旦拭き取り、塗りなおしてください。

上の写真はマイクロスコープとPCを接続し、PCのカメラアプリでキャプチャしたものです。(LCD上で80倍相当のキャプチャ画像)

こちらは、キャプチャ画像に対して、Win10のフォトアプリで、フィルタをかけた画像で血管の形状が多少分かりやすくなっています。

こちらは、LCD上で25倍相当の画像のPCキャプチャ画像です。


(参考)DM4で最大拡大率を得る方法

私が購入したDM4については、LCD画面上の表示で、最大80倍を得られることがわかりました。以下に最大倍率を得る方法を含め参考情報を記します。

鏡筒を上下させるリングを回し鏡筒を下げきります。(リングの回転方向と移動方向の関係を示すテープを貼付してあります・・・DWN方向に回し切ります)

この状態で、観察物と鏡筒の先端の間隔が約10mmとなると、80倍が得られます。

具体的には、鏡筒を下げきった状態で、マイクロスコープ本体の昇降ノブ(右側ノブ)と、必要なら、背面の取付ノブのみを操作し、観察対象と鏡筒の距離を約10mmに調整すれば、約80倍となります。(この時、鏡筒を上下させるリングは回さず、本体の昇降のみで合焦させるのがポイント)

以上で最大倍率(80倍)が得られますが、この状態から、A)昇降ノブを操作し、本体を僅かに下降させる。B)鏡筒のリングをUP方向に回し合焦させる。

A)、B)を繰り返すと、約50倍まで倍率を下げることができます。(80倍~50倍で可変することができる)

次に80倍のセッティングに戻し、今度は鏡筒を上下させるリングをUP方向に回して行くと、再度合焦する点が現れます。この時の倍率が約25倍となります。こちらの合焦点は、本体の上下と鏡筒の上下の組み合わせで、7倍~50倍の範囲で可変できる様です。


最後に

NHKの特番で、「ゴースト血管」をタイトルに含む番組が何度か放映され、毛細血管の観察画像が映し出されていました。番組で使用されていた観察装置は何種類かある様で、血流までクッキリと見えるものから、それほど鮮明でないものまでありましたが、手近なもので観察できないかと思いを巡らせていました。

そんな折、チップ部品を取り扱うに際し、あまりの小ささから、マイクロスコープの購入に至り、マイクロスコープの毛細血管スコープへの流用を思いつき、試行錯誤の結果、クッキリとは行かぬまでも、毛細血管を何とか観察する手立てを確立することができました。

なお、マイクロスコープとしてDM4を使った場合、上に示した手順を踏めば、倍率が80倍、25倍に設定できるので、LCD画面上での実測により、血管の本数(密度)や長さを定量的に把握することができます。例えば3か月毎の80倍、25倍画像を残しておけば、定量的な経過観察が可能です。

余談ですが、NHKの番組では、ルイボスティーやシナモン類が毛細血管の改善に効果がある(厳密には効果がある可能性が高いと)紹介されており、以前から愛飲していたルイボスティーをより積極的に飲む様になりました。また、シナモンについては、過剰摂取により肝臓に負担がかかる可能性があることから、少な目の摂取を心がけています。