「毛細血管スコープ」で、デジタルマイクロスコープを使った毛細血管の観察方法を紹介しましたが、デジタルマイクロスコープを使いやすくする工夫を幾つか紹介します。なお、特定機種「DM4」のレビュー(特徴的な点の紹介)を兼ねた書き方になっていますが、他機種への応用でも参考になる点があると思います。
全体像
最初にカスタマイズ項目を箇条書きにしますので、全体像をつかんでください。
【カスタマイズ項目】
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- LCD画面の保護(保護フィルムの貼付)
- LCD画面へのスケール(目盛)の追加
- 鏡筒の移動方向の表示の追加
- 倍率設定の目安となる表示の追加(高倍率側)
- 倍率設定の目安となる表示の追加(低倍率側)
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次に各項目について説明します。
LCD画面の保護(保護フィルムの貼付)
まず最初にLCD画面の保護を行います。専用の保護シートが無いので、大き目の保護シートを画面の大きさに切り出して貼付します。
ボタン部分を含めて保護シートで覆ってしまっても操作に支障がないので、ボタン・LEDを含めて覆っています。(LED部分が浮き上がっていますが、気にしないことにします)
今回は、百円ショップで売っているタブレット用の保護シートを使用しました。一概には言えませんが、適度な貼付強度が得られ(貼付が強すぎず)、作業性が良好でした。
LCD画面へのスケール(目盛)の追加
正確には、前の工程で貼付した保護シートにスケール(目盛)を追加します。最近はやりのマスキングテープに目盛り模様の物があるので、テープの幅を細くカットして貼付しました。
上の例では左下を原点としています。なお、横方向のスケールは、画面下側に貼付するとDigital Microscopeの文字とかぶってしまい見難いので、上側に貼付しています。
好みに応じてセンタリングの十字線に合わせても良いでしょう。
今回は左から2番目のマスキングテープを使用しました。柄がちょっとうるさい気もしますので、好みに応じて使い分けると良いでしょう。
なお、右の2本(黒と青)は細く切って、後述する倍率の表示に使用しました。
鏡筒の移動方向の表示の追加
DM4はリングを回すことにより鏡筒が上下しますが、鏡筒そのものが目視し辛いので、回転方向と移動方向の対応関係が分かる様にしておくと便利です。
テープライタで作成したものを貼っただけですが、回転方向を間違えることが無くなりました。
倍率設定の目安となる表示の追加(高倍率側)
DM4では、観察対象の実寸とLCD画面上の表示大きさの比率を倍率と定義した場合、最高倍率は80倍程度が得られます。
ただし、約50倍を境に、倍率の高低の変化と本体の移動方向が反転します。(この書き方だけでは分かり難いと思いますので、まずは実際の挙動を高倍率側と低倍率側に分けて書くことにします。)
まず、高倍率側の操作と倍率の探索について説明します。
最高倍率(約80倍)は鏡筒を下げ切った状態で得られます。以下の操作により80倍の設定となります。
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- リングを回し鏡筒を下げ切る
- 以降、リングには触れず、本体の上下のみにより観察対象と鏡筒先端が約10mmの位置で合焦させる
- 倍率が80倍であることを確認する
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なお、観察対象として方眼紙を使うと、縦・横方向同時に倍率が確認でき、歪の有無も確認出来て便利です。ただし、方眼紙では合焦点が分かりにくい場合があるので、金属製の定規を補助的に使うと金属表面の傷やテクスチャにより合焦が判別しやすくなります。
次に例えば倍率を70倍とするには、
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- リングを少し回し鏡筒を少し上げる
- リングには触れず、本体を僅かに下降させ、合焦させる
- 倍率を確認する
- 70倍になるまで、1.~3.を繰り返す
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上の操作により、私の手元のDM4では約80倍~40倍の倍率を得ることが出来ました。
写真では、5mm間隔で目盛りを振り、各倍率をフエルトペンでリングにプロットした後、細く切ったマスキングテープで倍率の目安となる線を形成しています。(高倍率は黒い線)
倍率設定の目安となる表示の追加(低倍率側)
操作に慣れていれば、低倍率の探索は容易だと思います。しかしながら、自信がない場合は、少し面倒ですが、以下の手順を踏めば確実です。
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- 最高倍率を得る(以下に手順を再掲載)
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- リングを回し鏡筒を下げ切る
- 以降、リングには触れず、本体の上下のみにより観察対象と鏡筒先端が約10mmの位置で合焦させる
- 倍率が80倍であることを確認する
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- 次に、リングだけを回し、鏡筒を上昇させて合焦点を探る
- 倍率が約25倍であることを確認する
- 高倍率側の時とは逆に、鏡筒を下げて本体を下げると高倍率側に遷移し、鏡筒を上げて本体を上昇させれば、低倍率側に遷移する
- 最高倍率を得る(以下に手順を再掲載)
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例えば、30倍に設定する場合は、
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- リングを少し回し鏡筒を少し下げる
- リングには触れず、本体も下げて合焦させる
- 倍率を確認する
- 30倍になるまで、1.~3.を繰り返す
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上の操作により、私の手元のDM4では無限遠合焦~50倍の倍率を得ることが出来ました。
写真では、10倍から50倍の範囲を5mm間隔で目盛りを振り、各倍率をフエルトペンでリングにプロットした後、細く切ったマスキングテープで倍率の目安となる線を形成しています。(低倍率は青い線)
DM4では無限遠の合焦が可能で、本来の用途ではありませんが、風景写真の撮影も可能です。無限遠の合焦点もわかる様に青色テープを縦に貼付してみました。(下の写真)
無限遠に合焦させて風景写真を撮ってみました。
ややピンボケ+手振れ+画素数が少ないので、風景写真を撮るメリットはありませんが、参考のために掲載します。
以上、纏めると、以下となります。
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- 鏡筒を最も上昇させた状態から、下降させてゆくと、まず、無限遠の合焦点が現れる
- 更に鏡筒を下降させてゆくと、連続的に80倍まで倍率が上がる
- ただし、高倍率に遷移させるための操作は、50倍を境に反転し
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- 約50倍までは、鏡筒を下降させ、本体も下降させる
- 50倍から80倍までは、鏡筒を下降させ、本体は上昇させる
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実際の使い方としては、倍率を先に設定し、本体の上下のみで合焦点させれば本体の移動方向はあまり意識する必要はないかもしれません。
カスタマイズに関係する項目は以上ですが、最後に本体の上下操作を行う際のコツを記します。
本体の上下操作について
上の写真はLCD画面に正対したときに左奥にあるノブです。このノブは、LOCK/UNLOCKと書かれている通り、上下動を行う場合に左に回してロックを解除し、反対側にあるUP/DOWNの表記があるノブを回して本体を上下させ、合焦した場所でLOCK方向に回して固定するのが本来の使い方と思われます。
しかしながら上の操作は両手の使用が前提で、毛細血管の観察の様に左手使えない場合の操作は煩雑乃至困難です。この様な場合、LOCK/UNLOCKノブを完全ロックの少し手前に調節してUP/DOWNノブのみを操作することになります。
この場合、LOCK/UNLOCKノブの調節には多少のコツが必要で、UP/DOWNノブから手を離した時に本体が下がらない範囲で弱めに締めると操作性が良い様です。強く締めすぎると、UP/DOWNノブでの合焦操作の後に手を離した場合、合焦点からのずれが大きくなる様です。