スマートキーはどう動くのか

スマートキーの車内保管を検討するため、所有している、FORESTER(E型・2017年登録)のスマートキーの動作の一部について観察を行いまとめました。

「スマートキーのスペアのスマートな保管場所」を読む

リモコン動作とスマートキー動作の違い

近年普及が目覚ましいスマートキーは、リモコン機能を併せ持つものが大半だと思います。まず、リモコン動作とスマートキー動作の違いを記します。

リモコン(動作)はボタン押下によりコード情報を含む電波が発射され、車載受信機でコード情報が復号され、コード情報があらかじめ登録された情報と一致した場合に解錠、施錠等が実行されるもので、施錠、解錠は別コードが割り当てられていると推測されます。(一方向動作)

これに対して、スマートキー(動作)は、車とスマートキーの間で電波をやり取りして識別用コードの合致を継続的に確認しつつ、ユーザの車体へのアクション(ドアハンドルを握る等)に応じて、施錠、解錠を行うものです。(双方向動作)

なお、識別用コードの中には、動作の指示を行う内容は含まれないと推定されますが、観察結果から、ドアノブ左・右、リアゲート、車内それぞれに異なる識別コードが割り当てられている可能性が高いと推測されます。

使われている電波は、車からの送信が134kHz(長波(LF))、スマートキーからの送信が314MHz(極超短波(UHF))が使用されています。

前ドア付近での動作

左右の前ドアのノブ付近からは134kHzの電波が200mSEC毎に発射されています。この様子は、AMラジオのチューニングを放送局を避けて最も低い周波数にセットし、ドアハンドルに近づけると”ザッ”という音として観察することができます。

134kHz をスマートキーが受信できる範囲が動作範囲ということになりますが、134kHzの出力は微弱であり、ドアノブを中心としたドア近傍に限られると推測されます。

スマートキーが動作範囲内に入り、134kHzを受信すると、スマートキーは314MHzを送信することで、応答を返していると思われます。スマートキーを観察していると、134kHzの信号に同期する形で、LEDが赤く点灯するのが分かります。LEDは約3秒毎に点灯し、AMラジオの”ザッ”音も200mSEC間隔から3秒間隔になることが分かります。

この状態でハンドルバーを握れば解錠、ハンドル前方のタッチセンサーに触れれば施錠動作が実行されます。

リアゲートでの動作

リアゲート付近でも前ドア同様に134kHzが送信されているものと思い観察を開始しましたが、予想を裏切られ、134kHzの定常的な送信は観察されませんでした。更に調べると、リアゲートの解錠ボタンまたは施錠ボタン押下をトリガーとして、134kHzが送信され、それに応答する形でスマートキーから314MHzが送信されることが分かりました。

車内での動作

 

 

ドアが開けられ、車内から発射された134kHzに対して、スマートキーが314MHzの応答を返すと、スマートキーとのやり取りは5秒間隔となり、5回確認した後、134kHzの送信が停止し、休止状態となることが観察できます。

一方、車内でスマートキーが認識されない場合、134kHzが約30秒間、回数にして40回送信された後、送信が停止されることが観察できます。

なお、車内でのスマートキーの挙動については、ドアの開・閉、エンジン作動・停止、ブレーキ操作等、多岐にわたる項目を整理し確認する必要がありますが、時間的制約もあり、不十分な解析に留まっていることをお断りしておきます。

 

施錠時の動作

さて最後は、スマートキーの車内保管に直接関係する施錠時の挙動観察です。

スマートキー(スペア)が車内にあり、スマートキーを携行した状態で、施錠用のタッチセンサーに触れた場合は、施錠が行われません。この際、車内から134kHzが送信され、車内に置かれたスマートキー(スペア)が314MHzを送信し、応答を返しているのが観察できます。

車内にスマートキーがない場合は車内からの134kHzに対する314MHzの応答がない事により、スマートキーが車内にないと判断していると推定され、施錠が実行されます。これが、普通に使っている状況です。

次にリモコンのボタンを押下した時の挙動について調べました。

リモコンの施錠ボタン押下による施錠操作では、車内のスマートキーの有無にかかわらず施錠が実行されます。ただし、車内のスマートキーの有無の確認が行われていないわけではなく、134kHzに対する314MHzの応答により、確認自体は行われていると推測されます。

なお、車内にスマートキー(スペア)が置かれたままリモコンで施錠した場合、スマートキー機能が停止され、ドアハンドルやリアゲートの解錠ボタンでは解錠できず、リモコンボタン押下でのみ解錠できることが分かりました。リモコンで解錠後は、スマートキー機能が復活します。

この動作は取説の記載としては見つけられませんでしたが、緊急避難的にスペアキーを車内に保管する場合に使えそうです。

通常使えていた機能がなんの警告もなく停止されるのでユーザビリティとしては問題がありますが、リモコンは車から離れて使う場合があり、かつリモコンにアンサーバック機能がないので致し方ない仕様ということでしょうか。

参考

314MHzのスペクトルを観察してみました。2つの周波数のピークがあることから、変調方式はFSK(Frequency Shift Keying)と思われます。134kHzの方は微弱なうえに環境雑音が多く、上手にキャプチャーできませんでした。